最新の記事
カテゴリ
以前の記事
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2011年 05月 13日
国際放射線防護委員会(ICRP)レポート111の解説に記載したように、“線量の管理”を行う際には、ある地域における「平均的な個人の振る舞いとその被ばく量」を想定し、対策を立てることは適切とは言えません。個人や生活習慣が似ているグループ毎に行われるべきです。その理由には、屋内外に滞在する時間の違いや放射線量の局所的な汚染の分布、食生活の違いなどが挙げられます。
今回の訪問により得られた知見から、地域住民の皆さん、政府や自治体に、対策していただきたい事例(既に提案しています)を以下に挙げます。 1. 警戒区域・計画的避難区域の設定について 政府は4月21日、22日付の報告で原発20km以内を一律警戒区域に、20-30km圏内の一部地域を計画的避難区域に設定しました。 http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/shiji_1f.html http://www.kantei.go.jp/saigai/20110411keikakuhinan.html 計画的避難区域には福島県葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部及び南相馬市の一部(原発20km圏外地域の一部)が含まれます。今回の線量評価でもわれわれが訪問した浪江町、飯館村については屋外では5μSv/hを超える地域がほとんどでした。そのため環境放射線線量のみを考慮した場合、避難はやむを得ないと考えます。しかしそれらの地域でも同時にコンクリート建屋内では1μSv/h以下になることもわかりました。飯舘村の特別養護老人ホームの方々などは、避難する方が、リスクが高いと言えます(http://Tnakagawa.exblog.jp/15420108/)。 地震および原発事故による大混乱のまま2ヶ月が経過しようとしておりますが、今後はICRP111に従った、個人レベルでの被ばく管理および「防護方策の最適化」と「防護方策の正当化」に従った具体的な施策を行っていただけるよう願いをしていきます。 2. 学校グランドの対策について 外部被ばくに関しては、1mの高さで計測される環境放射線量を用いるのが適切であると述べましたがhttp://tnakagawa.exblog.jp/15529167/ 、一方で、学校のグランドでは、生徒らが体育や部活動で泥だらけになることは想定されなければなりません。土埃による内部被ばくの危険性も、一般のケースに比べて高くなることも予想できます。児童生徒に対する個人被ばくの推定には、環境放射線量だけに頼らない対策が求められます。 放射性物質の濃度が高いことが推定される学校のグランドの場合、以下の手段が有効であると考えます。 1)校庭グランドの表層を削る。 2)学校敷地内の安全な場所に一時的に保管 3)国や県が主導となり、適切な保管場所に移送する 4月28日時点の郡山市の報告では、実際に表土除去を行った学校では、空間線量率の値が大幅に改善されています。 http://www.city.koriyama.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=23270 私たちの今回の調査でも、表層2cm程度のところにほとんどの放射性物質が存在していることが確認されました。 学校のグランドの表層を削ることは、将来ある子供の余計な被ばくを確実に減らすことができると考えられます。今後、梅雨の季節を迎えると、雨により土壌深くに放射性物質がしみこんでいくかもしれません。私たちは表層の除去とその一時保管について、できるだけ早期に着手することを政府に要求してきました。文科省は5月12日に「実地調査を踏まえた学校等の校庭・園庭における空間線量低減策について」を発表し、日本原子力研究開発機構の“児童生徒等の受ける線量を減らしていく観点から、「まとめて地下に集中的に置く方法」と「上下置換法」の2つの方法は有効である」”という報告から、被ばく低減策に取り組み始めました。 http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305946.htm 私たちの結果は、このような対策が被ばくの低減に対し有効であることを示しています。 http://Tnakagawa.exblog.jp/15529408/ 「まとめて地下に集中的に置く方法」と「上下置換法」については現実的な方法が取られるものと思われますが、いずれにしても、早期の着手を期待しています。 3. 山菜、キノコ、根野菜の摂取について 現在、Cs-134、Cs-137は土壌表面に存在しています。これらは数年から数十年をかけてゆっくりと、より深い部分にも入り込んでいきます。山菜、キノコ、根野菜は土壌の栄養分として様々な物質を吸い上げますが、セシウムも吸い上げてしまうことが判明しております。汚染地域の山菜、キノコ、根野菜を無秩序に摂取してしまうと余計な内部被ばくにつながるため、内部被ばくを考慮した被ばく量の評価を行う必要があります。今回、われわれは地元住民の了解のもと、飯館村に生えている山菜をいくつか採取させていただきました。その値はセシウムの暫定規制値500Bq/kgを超えていました。カリウムを多く含む山野草では、セシウムもまた濃度が高くなる可能性があるので、注意が必要です。規制の掛からないこれらの食物は、決して食べないように注意を徹底することが大事です。また、空間線量率のみで被ばく量を算出する現在の方法を変更すべきです。特に、これまでの食物の摂取に関する調査を行うことを政府や自治体に提案します。 4. 勉強会の開催について 放射線は目に見えず、人体への影響もわかりづらいこと、わかっていなことなどがあり、不安を大きくしています。また風評や偏見も拡がっています。専門家を交えた、原発近郊の地域住民の皆さまに対する意見交換会や勉強会は大変重要であると考えます。こうした機会を自治体だけではなく、各専門の学会が単独で、もしくは共同しながら作っていく必要があります。私たちもそのような働きかけを進めています。
by teamnakagawa
| 2011-05-13 17:53
| 福島訪問
|
ファン申請 |
||