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2011年 05月 13日
空間線量率に引き続き、福島県を訪問した際に採取した、飯舘村小宮周辺、浪江町津島周辺、南相馬市(鹿島幼稚園・小中学校、八沢小学校、上真野小学校)の土壌サンプルおよび飯舘村で採れた山菜やほうれん草、浪江町で採れたふきのとうの放射能についての結果を報告いたします。
【ゲルマニウム検出器及び広窓GM管サーベイメータによる測定】 土壌や作物に含まれる放射性物質の種類と量を調べるには、放射性物質から発せられる“ガンマ線のエネルギー”を同定できるゲルマニウム検出器を使います。放射性ヨウ素131は崩壊によって、364 keV(キロエレクトロンボルト)のガンマ線を放出します。放射性セシウム134と放射性セシウム137はそれぞれ604 keVと661 keVのガンマ線を放出します。エネルギーの違うガンマ線の量を調べることで、土壌や作物に含まれる放射性物質の種類と量を調べることができます。 【ゲルマニウム検出器により得られるスペクトルの例】 しかし、放射性物質の量が少ない場合、ゲルマニウム検出器による測定では、定量するのに大変長い時間を要してしまいます。南相馬市にある幼稚園や小中学校の5-7cm、10-12cmでは放射性物質の量が少なく(これは大変良いことです)、まだゲルマニウム検出器では計測できていません。表層との放射線量の違いを示すために、簡易的にGM管による放射線量の測定も行いました。GM管ではヨウ素やセシウムの区別がつかず、また定量性もないため、あくまで参考値として見てください。 サンプルの量が同程度(250-350g)になるよう調整してGM管で計測後、よく混ぜた試料の一部(約100g)をU8容器にいれてゲルマニウム検出器により測定しています。 【土壌サンプルの放射能測定結果(4/29換算値)】 南相馬市 I-131 Cs-134 Cs-137 GM管 鹿島幼稚園(表層) 301 865 1077 163 鹿島幼稚園(5cm) --- --- --- 58 鹿島幼稚園(10cm) --- --- --- 36 鹿島幼稚園砂場(表層) 322 1577 2125 275 鹿島小学校-1(表層) 582 1615 2038 206 鹿島小学校-1(5cm) --- --- --- 17 鹿島小学校-1(10cm) --- --- --- 13 鹿島小学校-2(表層) 570 1478 1921 212 鹿島中学校(表層) 772 1894 2397 275 鹿島中学校(5cm) --- --- --- 24 鹿島中学校(10cm) --- --- --- 29 鹿島中学校(水溜りの泥) --- --- --- 395 八沢小学校(表層) 324 1120 1481 259 八沢小学校(5cm) --- --- --- 40 八沢小学校(10cm) --- --- --- 31 上真野小学校(表層) 567 1774 2364 180 上真野小学校(5cm) --- --- --- 41 上真野小学校(10cm) --- --- --- 33 上真野小学校-2(表層) 398 1433 1840 290 飯舘村 I-131 Cs-134 Cs-137 GM管 飯舘村小宮(表層) 47896 37941 47525 3683 浪江町 I-131 Cs-134 Cs-137 GM管 浪江-1(表層) 32547 34231 43140 5579 浪江-1(5cm) 4709 2885 3619 646 浪江32地点(表層) 19931 36240 46138 6413 浪江32地点(5cm) 2429 4486 5754 752 浪江32地点(10cm) 670 1596 2045 481 単位はBq/kg(GM管測定における単位はcpm/kg) 有効数字は2桁程度ですが、わかりやすくするため全ての桁を表示しています。 放射性核種の存在量は、全て4/29の値に換算しています。 GM管サーベイメータによる測定では、検出部に2mmのアクリル板を挿入しています(ベータ線を遮蔽するため)。 5cm深さのサンプルのゲルマニウム検出器による計測値は、浪江町の32地点しかまだありませんが、表層に比べヨウ素(I-131)で7~8分の1、セシウム(Cs-134とCs-137)では8~11分の1になっていることがわかります。GM管での簡易測定からも、同じ傾向が見えます。 なお、土壌サンプルのGM管による測定値と、その地点での1m高さでの空間線量率のデータとの間には相関が見られます。 土壌の表層が放射性物質で汚染されていること、その放射性物質が半減期の長いセシウムであること、その量に応じて空間線量率が上昇すること、などという事実は、表層を除去することは大変有効な手段であることを示唆します。実際に、郡山市の報告では、表土除去を行った学校では、空間線量率の値が大幅に改善されています。5月8日に行われた日本原子力研究機構の同様な試験とも矛盾しません。 http://www.city.koriyama.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=23270 http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305946.htm 【山野草の放射能測定結果(4/29換算値)】 飯舘村は山菜の宝庫です。山菜採りを楽しみにされていた方も多くいらっしゃったと聞きます。キノコ類やゼンマイなどの山菜にセシウムが集積しやすいこと知られています。飯舘村の住民の方に協力頂き、ホウレンソウや山菜をご提供いただきました。その簡易測定結果は以下のようになります。 種類 I-131 Cs-134 Cs-137 たらの芽(飯舘村) 104 2874 3528 ぜんまい(飯舘村) 560 10240 13242 からし菜(飯舘村) 191 462 606 ふきのとう(浪江町32地点) 1078 9681 12061 ほうれん草根(飯舘村)水洗い 317 766 1036 ほうれん草茎(飯舘村)水洗い 77 426 539 ほうれん草葉(飯舘村)水洗い 489 2660 3353 単位はBq/kg 有効数字は2桁程度ですが、わかりやすくするため全ての桁を表示しています。 放射性核種の存在量は、全て4/29の値に換算しています。 “ぜんまい”は、採取量(3.6g)が少ないため、kg換算時に誤差が大きくなっていると推察されます。 ほうれん草以外は水洗いしていませんので、大きめに評価されています。それでもかなり大きな数値です。早急の対策を講じることが必要です。(原発から北西部に位置する山間で採取された、規制の掛からない山野草に関しては、絶対に食べないように注意喚起するとともに、空間線量率のみで被ばく量を算出する現在の方法の変更を、政府や自治体に提案を行っています。) 今回、山野草に高かった理由についてですが、以下のように考えられます。植物の根は一見土壌深くに入り込んでいるように見えますが、実際には相当量が表面数センチに張っています。また、セシウムは降ってきてせいぜい2ヶ月、ということもあり、土壌に吸着してはいますが、それでも動き易いものが多く存在します。春の芽吹きとともに吸水力や栄養吸収力がアップした山野草は、一気にこの「動き易いセシウム」も吸収し、そのためセシウム濃度が高まったのが理由の一つと考えられます。
by teamnakagawa
| 2011-05-13 17:38
| 福島訪問
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