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2011年 04月 15日
福島県から避難してきた子供たちが、避難先で偏見を持たれるケースが生じています。一時帰宅された方の受け入れを、避難所などで問題にするケースもあるようです。拒否された方々は、深い心の傷を負うことでしょう。また、心ない言葉をかけた方々のことを想像すると、その人々が、よくわからない放射能の不安から、過剰な反応をしてしまうことも理解できます。
放射線や放射性物質は目で見ることができず、一見影響も全く見えません。このことが不安を大きくしてしまう原因の一つであると思います。そして、放射能への偏見や風評が広がることが被災地の復興・復旧に大きな影響を及ぼします。今私たち(特に大人)は、放射線を“正しく”怖がることが必要です。 私たちteam_nakagawaは、放射線治療のチームです。患者さんに治療として与える放射線は、福島第一原発敷地内で観測されている放射線よりも何倍も強力です。ですが、患者さんの体の外から放射線を与える(照射する)場合、治療後に患者さんにいくら近づいても、私たちやご家族などが被ばくすることは決してありません。 また、放射線の照射以外にも、放射線治療や診断では、さまざまな放射性物質を患者さんに投与しています。今回の原発事故で話題となった放射性ヨウ素131も、甲状腺がんやバセドウ病の治療として患者さんに内服してもらうことがあります。これは言わば“内部被ばく”です。 放射線治療の“内部被ばく”の量は、今回、それが最も高いと考えられる福島第一原子力発電所作業員の方々の内部被ばくよりも桁違いに大きいと考えられます(甲状腺がん治療で1回最大3,700,000,000 Bq(ベクレル)。これは飲料水1kgの暫定規制値300 Bqの1千万倍です。)。その場合でも、投与直後(注1)を除き、私たち治療チームが、患者さんに尽きっきりで世話をすることに全く問題が生じません。 注1: 患者さんは、放射性ヨウ素131を内服後、別部屋に居てもらいます。患者さんの体表面から1メートルの地点で測定された線量率が、1時間あたり30 μSv(マイクロシーベルト)以下であれば、退出・帰宅が認められます。バセドウ病の患者さんで即日、甲状腺がんの患者さんで3日程度です。 避難区域に長く滞在していたとしても、現在の内部被ばく量は、放射線治療に比べれば本当に“微々たるもの”です。それによって、周囲の方々が被ばくするようなことなど、決してないことがお分かりになると思います。(もちろん、避難されている方々の放射線による健康被害を考える必要はない、などと私たちが主張しているのではありません。) 環境放射線測定データを見る限り、3月15日以降、大規模な放射性物質の放出はありません。放射線の強さは各地で横ばいか減少傾向にあります。 原発から飛散した放射性物質は、自然に、もしくは雨によって地面に落ちてきます。今、測定されている放射線は、ほとんど地面や草木、壁にくっついた放射性物質から放たれています。一方、大気中の放射性物質は、ほとんど気にする必要がないくらい少なくなりました。 したがって今観測されているデータに基づけば、避難区域に一時帰宅したくらいでは、その方に放射性物質が大量に付着することは有り得ないことがわかります。一時帰宅された方と接触したからといって、その方から(得体の知れない“放射能”は言うまでもなく)大量の放射性物質を受け取ったりすることもありません。 私たちteam_nakagawaは、放射線治療のチームであるため、今回の事故を医療被ばくと比較しがちです。しかしながら、“医療被ばくとは何が違うのか?”のところでも書きましたが、医療被ばくにはメリットがある一方で、原発事故による被ばくにはメリットがありません。その上、多くの方々を不安にさせ、その心(特に子供たちの心)に深い傷を負わせた今回の福島第一原発事故を、一刻も早く収束させて欲しいと思っています。
by teamnakagawa
| 2011-04-15 18:30
| 住民の被ばく
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