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2011年 03月 20日
(twitter更新日2011.3.21の再掲)
放射性ヨウ素(I)やセシウム(Cs)による内部被ばくによって、具体的にどの程度の健康被害が起きるのでしょうか。内部被ばくについて考える前に、「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」の違いについて見てみましょう。 Bq(ベクレル)というのは、一秒間あたりの放射性物質の崩壊数を表します。いわば「放射能」のことです。「崩壊」を理解するには、Cs-137を例に、東京大学の早野龍五先生が作成くださった図を参照ください(図1)。 ![]() 例えば、放射線物質であるCs-137(セシウム137)は、安定なCs-133に比べて中性子の数が多過ぎ、一個の中性子が陽子に変わります。これをベータ崩壊と言います(図1参照)。 Cs-134(セシウム134)も同様です。 一方、崩壊した時に出てくるベータ線やガンマ線(放射線)が、人体に与えるダメージを「被ばく量(Sv:シーベルト)」で表しています。 「放射能(Bq:ベクレル)」と「被ばく量(Sv:シーベルト)」は密接な関係にあります。放射能が増えると被ばく量も当然増えます。 食物に含まれる「放射能(Bq:ベクレル)」が、それを摂取する私たちにどれだけ「被ばく量(Sv:シーベルト)」を与えるかは、放射性物質の種類、取り込み方(吸引か経口か)、私たちの年齢などによって変わります。(表1参照) ![]() p.36 別表4:実効線量及び甲状腺等価線量への換算係数表(mSv/Bq) (但し、Cs-137において、1.3×10-4 → 1.3×10-5に訂正) これらを考慮すれば「放射能(Bq)」から「被ばく量(Sv)」に変換できます。 では、まずCs(セシウム)による被ばく量(Sv)を見積もってみましょう。 Cs-134(セシウム134)は、3月16日8時に福島市で水道水中に1kgあたり25Bq(ベクレル)観測されました。それ以降は観測されていません。被ばく量に変換するためのCs-134(セシウム134)の「変換係数」は、大人で0.019μSv/Bqです。つまり、1Bq(ベクレル)で、0.019μSv(マイクロシーベルト)の被ばく量であると計算できます。 この「変換係数」は、私たちの年齢などによって変わります。では、3月16日8時に福島市での水道水を2リットル飲んだとしましょう。体内には50BqのCs-134が取り込まれます。「変換係数」を使うと0.95μSv(マイクロシーベルト)の被ばくです。同様にCs-137では、0.86μSvの被ばくです。両方足し合わせると、1.81μSvです。 3月19日、ホウレンソウに1kgあたり524Bq(ベクレル)のCs(セシウム)が観測されました。Cs-134かCs-137か内訳はわかっていませんので半分ずつだと仮定します。このホウレンソウを100g食べたとすると、トータルで0.84μSv(マイクロシーベルト)の被ばくとなります。 [ちなみに私たちは日頃から食物に含まれる放射性K(カリウム)による被ばくを受けています。それは1年で100~200μSv(マイクロシーベルト)と推定されています。] 今推定したCs(セシウム)の被ばく量は、放射性物質を一度摂取したことによって70歳になるまでに蓄積されるであろう被ばく量を表します。もちろん年齢による代謝や食生活の違いによって個人差も生じると考えられます。 ここで推定されたCs(セシウム)の被ばく量は少ないように見えますが、食品衛生法上の暫定(ざんてい)規制値を越えているのも事実です。規制値を越えた食物の流通を管理することで、国民の安全が確保されると考えています。 では、次にヨウ素I-131の被ばく量も見積もってみましょう。 放射性物質であるヨウ素I-131の「変換係数(μSv/Bq)」は、0歳で0.140、1~6歳で0.075、7~14歳で0.038、15~19歳で0.025、大人で0.016です。(乳児はお母さんの母乳から摂取するとします。) ホウレンソウ中に観測されたヨウ素-131の最大値として、1kgあたり15,020Bq(ベクレル)を用います。そのうち100gを摂取したとします。 1~6歳 :15,020×0.1×0.075 = 112.65 7~14歳 :15,020×0.1×0.038 = 57.08 15~19歳 :15,020×0.1×0.025 = 37.55 大人 :15,020×0.1×0.016 = 24.03 単位は(マイクロシーベルト)です。乳児の場合は、I-131を摂取した母親の授乳により乳児が受ける線量は母親の摂取量あたり0.054 μSv/Bq (参照:ICRPPub.94 Table 13.1) として、15,020×0.1×0.054 = 81.11μSv(マイクロシーベルト)が被ばく量となります。 乳児の方がお母さんよりも被ばくが多くなります。これは、ヨウ素が母乳で濃縮されることが理由ではありません。乳児に影響を与えるのは、摂取した母乳中のヨウ素の濃さではなく蓄積量ですから、乳児がヨウ素をお母さん以上に摂取することはあり得ません。乳児の方がお母さんよりも被ばくが多くなるのは、乳児は大人よりも臓器が小さく、また放射線に対しての感受性が高い等の理由が考えられます。お母さんが摂取を抑えることで、乳児への影響も十分小さくできると考えられます。 以上より、人体に影響の出てくると言われている被ばく量100ミリシーベルト=10万マイクロシーベルト(累積)に比べると、ホウレンソウ100gを一日食べたことによる、放射性ヨウ素、放射性セシウムからの被ばく量は、乳児、成人共に健康に影響を与えるレベルではないことをご理解頂けると思います。 今は、水道水とホウレンソウからの被ばくだけを見積もりましたが、他の食物や自然界からの放射線をすべて考慮して、被ばく量を考慮すべきということも頭に入れておく必要があります。
by teamnakagawa
| 2011-03-20 17:44
| 被ばくとは
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